ベトナムに来た方の多くがまず驚くこととして、道を走る「バイクの量」というものがあると思うのですが、それに伴ってこちらではクラクションの音もすごいです。それぞれの音が大きいというよりは、何かもうひっきりなしに鳴っている感じです。至る所で。大きな道路や交差点になるに従って、量も頻度もかなりのものになります。

日本は、なるべくクラクションを鳴らさない方向で皆さん調整されますよね。最近ではクラクションを鳴らす事自体がトラブルの元にもなりかねないですし。私もこれまで十数年自動車を運転していて、クラクションを鳴らしたのは指で数えられるくらいの回数だと思います。日本におけるクラクションは、注意を喚起する純粋な「警告音」というよりは、もう少し積極的に相手の行為に期待する側面があると思うんですよね。それは「どいて」だったり「早くして」だったり。日本の「察しろ」文化と関係があるのかなぁと思いますが、だからこそ、使う側も慎重になってしまうというか。

一方ですね、こちらではものすごく皆さん頻繁に鳴らすんですよ。ほぼ100%のライダーが1回の運転中に何がしかのタイミングで鳴らしているといっても過言ではない。ちょっと隣を走るバイクとの距離が近くなった時点で「パッパー」、交差点でのぬるっとした合流で「ピッピー」、道路を横断する歩行者が見えた段階で「プップー」という具合に。これが本当に最初のうちは慣れなくて、そこかしこで常にクラクションの音が響いてることがかなりのストレスだったのでした。

しかし、自分もGrabなどバイクタクシーに乗って頻繁に出かけているうちに、分かってきたのです。

 

 

あ、クラクションは自分の存在を相手に知らせるツールなんだな、と。

 

 

バイタクのドライバーさんがクラクションを鳴らす時って、道路で合流するときや車線変更するとき、また細い路地から大きな道路に出るときなど、シーンがある程度限られていることがわかったんです。滅多やたらに鳴らしているわけではない。まぁ、中にはやったらめったら鳴らしまくるドライバーも居ることは居ますけどね。え?そのバイク、走ると同時にクラクションが鳴る仕組みになってるの?みたいな。でも、大概は皆さん良識人ですので、不必要には鳴らさないです。

で、その場面を観察しているうちに、ああ、これはいわゆる日本でいう「どけ」とか「早くして」ということではなく、もっとラフに「あ、ここにいますよー」と自分の存在を周囲に知らしめるツールなのだな、と思い至ったわけです。相手を「どかしたい」「あおりたい」という積極的な働きかけではなく、純粋に「ここにいるので気をつけてねー」という感じ。これに気づいたことで、今までクラクションを鳴らされていちいち「ひぃ!」とビクついていた私も、だいぶ気持ちが楽になりました。相手も事故りたくないのは同じはずなので、クラクションで「ここにいるからねー」「気をつけてねー」と言っているんだな、ありがとよ、と。

 

……とまぁ、ここまで書いてきましたが、これ特にローカルの友達に確認したわけではないので本当のところは分からないんですけどね。もしかしたら全員が全員「どけ!」「ゆずれ!」って大合唱してるのかもしれないですし。真実は闇の中です。でも、少なくとも私はクラクションの音を「ここにいるよー」と読み替えていたほうが精神衛生上よろしいので、特に真実を明かすことなくそう思っていることにします。

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