先日、一時帰国の際に仕事用のズボンを購入したのですが、
閉店ギリギリに駆け込み&翌日から実家に帰るなど予定が詰まっていたため、
そのお店で裾上げをお願いできなかったのですね。
その時は、「まー実家にミシンあるから自分でやればいっか」と思ってたんですが
実家に帰ったら帰ったで、何やら雑務がいろいろと出てくるわけですよ。
たまってた郵便物の仕分けとか、年賀状ソフトの宛名変更とか(我が家では、私しか使い方を把握していないブラックボックス状態)。
そんなこんなでタイムアップになっちゃいまして、
でもこれハノイで着たいんだけど……と思った矢先に、思いついたのです。
あ、てかハノイでやっちゃえばいいじゃん。
ということで、帰国してから数日間寝かせておいたズボンを抱えて
本日初めて行ってまいりました。ハノイで裾上げ。
とはいっても、まずどこでやってくれるんだろうということで
先達のブログをいくつか参照したところ
どうやら「sửa chữa quần áo」というのが、「洋服のお直し」を指す単語だということが判明!
ふっふっふ。キーワードさえ分かってしまえばこっちのもの。
これを偉大なるブラックボックス「Google Maps」にコピペしてしまえば
近くの該当する店をよしなに教えてくれるのだっ!
なんて便利!テクノロジー万歳っ!!
というわけで、本日は旧市街の18 Hàng Bồにある、「Sửa Chữa Y Phục」というお店に行ってきました!
ちなみに、「Sửa Chữa」は「改修する」、「Y Phục」は「衣服」の意。
ベトナム語も元々は漢字の読みがベースになっていますから、
こういうところで日本語との共通項を実感すると嬉しくなります。
ってか、清々しいほど、ド直球の店名!
店の前まで行って中を覗くと、たくさんのミシンと作業に没頭する3人のお姉さん達が!!
よしよし、絶対ここで間違いない!と確信。
しかし一方で、完全にこれ英語とか通じる雰囲気じゃないよなぁと思いつつ、
一番最初に目が合った、一番手前のミシンで作業をしていたお姉さんに話しかけてみます。
私「Xin Lỗi(すみません)」
手前のお姉さん「……」
何も答えることなく、そのまま下を向いて作業続行です。
はい。デフォルトの塩対応です。
いいのです。これこそがハノイ。知らない人には簡単に心を開かない。
言ってることが分からないやつの言葉は聞き流す。
聞いても分からなそうな奴は最初から相手にしない。
私もハノイに住んで、はや1年。この手の対応にはもう慣れました。
こんなことで怯んでたら、このソルト対応シティではやっていけません。
というわけで、奥のミシンで作業をしていたお姉さんとも目があったので
ずかずか奥まで進んでいって、再度トライ。
英語が通じないであろう前提だったので、歩きながらズボンを袋から取り出し、
お姉さんの目の前で裏返しに折り曲げて、「裾上げをお願いしたいんですけど」を
思いっきりジェスチャーで伝えました。
するとお姉さんが私のズボンを手に取り、
「ここで折っていいのね?」という感じで裾上げの長さを確認。
私が「うんうん」とうなずくと、おもむろに近くのプラスチック椅子を指差し
「シットダウンプリーズ」
あれ、英語いけたクチ?
なんだ、それなら最初っから英語で話せばよかった。
いや、でも最初からいけしゃあしゃあと英語で話してたら
「いけすかん」って門前払いを食らったかもしれないから
やはりジェスチャー作戦は有効だったと思われます。
なんだろ、この辺の機微、難しすぎる。
しかしですよ、椅子に案内されたということは、もう勝ったも同然です。
ハノイの人々は門前払いのハードルが高めなぶん、懐に入ってしまえばとても優しいので
店の中に招き入れてくれたということは、どうにかしてくれる気があるということです。
(そんな複雑なこと頼む気はないけどさ)
さらに店に来る前は
「これどのくらい時間かかるのかな」「あとで取りに来てとか言われるのかな」
「うわ、日付とか時間のやりとりとか、ベトナム語オンリーだったらGoogle翻訳使わないと無理じゃん」
などと考えていた私ですが、
伝家の宝刀「シットダウンプリーズ」が出たということは、
座って待てる時間内でサクッとやってくれる可能性が高い、ということでもあるわけです。
おー、よかったーと安堵しながら改めて店の中を見回すと、
多数あるミシンは全て足踏み式。
さらに壁際には布の色に対応した、たくさんの糸巻きがありました。
さすがお直し専門店だなぁ、すごいなぁなどと思いつつ
あれ?そういえば値段いくらなんだろう。すごい金額ぼったくられたらどうしよう。
先に値段聞いておいて、法外な価格だったら持って帰ろう……。
などと考え始めたところで、
今までの仕事を引き続きやっていたお姉さんがむんずと私のズボンをひっつかみ、
振り返りざま私に「サーティーサウザンド」と告げました。
あ、30,000ドン(約150円)か。日本で頼んだら300円だったから、半額ならいっか。と思い
「OK」と伝えると、お姉さんはそのまま別のミシン台に移動。
もうやってくれるんだ。今の仕事が終わってから、とか後回しにしないんだなぁ、すごいフレキシブル。
などど思っていたら、ミシンの前に座るが早いか、お姉さんは目にも留まらぬ速さで
私のズボンの裾上げをスタートしました。
当然、待ち針で仮止めなんて余計なことはしません。
指で押さえながら、縫う。
ただそれだけです。
それにしても足踏みミシンの足さばきがすごい。
プロフェッショナルです。かっこいいなぁ。
そんなこんなで、あっという間に片方の裾上げが終わり、
お姉さんが「これでいい?」的な感じで、縫った部分を見せてくれました。
えっ、なにコレ、すごい!
なんかあんなラフに縫ったと思えないくらい、ジグザグ複雑に縫ってあります。
しかも
全くもって表からは見えない!!!
すごーい!と感動して拍手を送ると、お姉さんは少しだけ微笑んで
もう片方にも取り掛かり、あっという間に裾上げが完了しました。
時間にしてたぶん5分弱だったと思います。
えー、この速さで30,000ドンなら全然いいよー!と思いながら
席を立ってお金を用意しようとすると、
お姉さんが「焦っちゃいけないよ」的なジェスチャーで私を制しました。
「え?なになに?」と思っていたら、
何と、スチームアイロンできちんと裾部分のプレスもしてくれたのです!
予想外の(失礼)丁寧な仕上げに驚き!
縫ったらそのままポイって手渡されるものだと思っておりました……。
アイロンがけを終えたお姉さんは私にズボンを手渡してくれ、
私は言われたとおりに30,000ドンを支払って、全て終了。
お店を出るときに「Cảm Ơn(ありがとう)」と言ったら
笑顔で「サンキュー」といってくれたお姉さん。
ハノイでの裾上げ、断然アリだな!と思ったのでした。