「あいうえお」の50音に沿って連想する単語で、ハノイを紹介するシリーズ。2回目にしてとんでもないテーマとなっていますが、本日は「い」。「犬肉」についてご紹介します。

ベトナムでは牛・豚・鶏などのほかに犬肉(Thịt chó/ティッ・チョー)を食べる文化がありまして、現在のハノイでも普通に食されています。ローカルのビアレストランであるビアホイでも普通にメニューに並んでいますし、ハノイ郊外のハタイでは、豚の丸焼きよろしく犬の丸焼きが売られています。調理法としては鍋にするか、香辛料と一緒に炒めるか、もしくは串焼きにするといった感じです。

私がハノイで一番最初に住んだ場所の近くの通りは、地球の歩き方では「犬鍋のお店が並ぶ」と紹介されており、そのため件の通りを歩くたび、食堂を横目に「この中のどのお店が犬肉を扱ってるんだろう。あのショーケースの中にある肉はもしかして……」と戦々恐々としていたものですが、「犬肉」を表すベトナム語が「Thịt chó」だと知ってから改めてそれぞれの食堂の看板を見て、どのお店どころか全部が犬肉鍋を扱う店だったことが判明したというエピソードもあります。

ベトナム人の友人によれば、犬肉は「運気を一新する」と信じられているといい、そのため悪いことが起きた際に食べるそうです。しかし、「昔の人は食べたけれど、今の若い人たちはあまり食べない」とも述べており、日本におけるクジラ肉のような存在なのかなぁと思っています。ただ、一方で地域差もあるようで、ハノイから離れた地域だと、年齢にかかわらず犬肉をよく食べるようです。

日本語のクラスで生徒達に「○○したことがありますか」という表現を教えると、ほぼ100%の確率で「先生は犬肉を食べたことがありますか」と聞かれます。そのため、少しオーバーぎみに「ええー!犬肉は食べたことがありません」と言うと、これもまたほぼ100%の確率で大ウケします。「犬肉は、おいしいですか」と聞くと、みんな「犬肉はおいしいです」といいます。ある時、会話練習のため「ピクニックには何を持っていきますか」と聞いたところ、「果物と、ジュースと、犬肉」と答えられて返事に困るという出来事もありました。

実際のところ、2018年にはハノイ市人民委員会が市内の各区・郡・町の関連当局に対して犬肉や猫肉(そう、猫の肉も食べるんです!)の販売禁止に向けて管理取り締まりの強化を要請する文書を交付しているのですが、現時点であまり功を奏しているとは思えません。2021年までに犬肉、猫肉食を全面的に禁止する方針ではあるのですが、人々の生活に根付いているだけにどうなるか……という感じです。

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