「あいうえお」の50音に沿った単語で、ハノイを紹介するシリーズ。今日は「か」。ハノイの街で見られる「漢字」についてご紹介します。

現在のベトナムの公用語はベトナム語で、総人口の約8割強を占める「キン族」の母語です。ベトナムには54の民族が共存しており、多勢であるキン族の母語が公用語になっているわけです。文字にはアルファベットを使用し、その上下に「声調記号」や「母音記号」をつけます。見た目は英語に近いわりに、読み方がとんでもなく難しいのですが、またそれは別のお話で。

過去に遡ると、ベトナムは紀元前111年から紀元後938年まで1000年以上もの間中国王朝の支配下にあり、長きにわたってベトナムの公式の文字は漢字でした。その後、1900年代のフランスからの統治をきっかけに教育制度が大きく変わり、1954年に正式に漢字は廃止されました。しかし、現在でもお寺の外壁などに漢字文化の名残を見ることができます。

↑鎮国寺

↑文廟内部

現在、若い世代のベトナム人は漢字が全く読めません。例えば、若いベトナム人の友人と寺を訪れたとして「これ、何て書いてあるの?」と漢字の意味を尋ねてみても「読めないから分からない」と言われます。しかし、興味深いのはお寺を修復したり、お寺が新設される際にはやっぱり漢字が使われるという。いや、それならいっそベトナム語にしちゃえばいいじゃん、と思うのですが、そういうことではないようです。だから、アウェイな旅行者であっても我々のほうが、寺の由来や祀られている人物を漢字から想像できたりするわけです。

以前、ハノイの文廟を訪れた際の出来事ですが、内部の資料展示コーナーに「中国の王朝とベトナム王朝がやりとりした手紙」なるものが厳かに展示されていました。額に入れられた手紙には漢字で何事かがびっしりと書かれており、ベトナム人の観光客たちは「ふむふむ、貴重な昔の手紙らしいぞ」という感じで足を止めて閲覧していました。その様子に私も興味をもち、どれどれ、なんとなく漢字から手紙の内容が推察できそうだぞ、と立ち止まって読んでみたところ「今度、宴があるからお酒を持参してきてほしい。あなたは美男子だから、女性達が喜ぶだろう」的な事が書いてあるように推察され「ただのコンパの誘いじゃねぇか」と思った記憶があります。いや、もし違ってたらごめんなさい。

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