これはいつかやってやろうと思ってた、「人」シリーズの幕開けなんですけれどもね。私が遭遇したありえない出来事を、その時の当事者にスポットを当てつつ紹介しよう、という。

いや、日本から一歩外に出たら「ありえない」ことって往々にしてあるじゃないですか。日本の常識が通じないというかね。でも、それこそがまさに海外に出る醍醐味でもあり、自国の常識や価値観を第三者的に見ることができるいいきっかけになるわけなんですけれども。

でもね、ベトナムで起きる出来事って往々にして振れ幅が大きすぎるんだよね!

というわけで、華々しい第一回目を飾るのは、まさに今日出会ったおじさんです。

今日、私はかなり大事な約束があって、ちょっと急ぎ気味にバイクタクシーをアプリで捕まえたわけです。こちらでバイタクが呼べるアプリは、大きく

・Grab
・goviet
・be

上記の3つです。個人的な感覚ですけど、なんとなくgovietのドライバーはおっちゃんが多い感じ。Grabのドライバーは若者からおっちゃんまで幅広い感があります。Grabの波に乗り遅れたおっちゃんドライバーをgovietが取り込んだのかなー。まぁ、推測ですけど。ちなみに支払い方法も、Grabは日本のクレジットカードを登録してあるのでキャッシュレス。ほかの2つは、いつもニコニコ現金払いです。

で、これまではGrabを使うことが多かったんですが、最近ちょっと値段が高い気がしまして、govietの登場頻度が高くなってきたわけです。今日も、4.5kmくらいの距離を移動するのにGrabだと3万5000ドン(約175円)に対して、govietが2万6000ドン(約130円)だったもので、「あ、こりゃgovietだな」ってオーダーしたんですよね。あれ?ここまで書いておいて、純粋な日本人の皆様は「そんな変わんねーじゃん」って感じでしょうかね?いやー、だんだん人間の金銭感覚って変わってくるものですね。

まぁ、それはさておき、バイクを呼んだんですよね。その時点で、ちょっと急がないといけない感じで、約束の時間は13時半。時計を見たら13時10分。約束の時間まであと20分。いや、通常なら13分くらいでつくはず、大丈夫、大丈夫。で、指定した場所に来たバイクに焦りつつ乗ったわけです。「シンチャオー」なんつって。

そのドライバーさんはまあまあのおじさんで、英語が通じない替わりににこういうおじさんって道にものすごく詳しいし、赤信号でも平気で突破してくれるんで頼りになるんですよね。例に漏れず、このおじさんも私が乗るや否や、到着場所を確認してスマートにバイクを発車してくれました。その後も、もちろん順調。「そうそう、あそこの交差点は混むから、こっちの道なんだよねー」「よしよし、今のタイミングで赤信号突破するの、いいよー」って痒いところに手が届く運転で、「このままだと10分以内にはつくかも」という感じでした。

 

ところがですよ。そうは問屋がおろさないんだって in ハノイ。

 

急に道半ばにしておじさんが急に路肩にバイクをすーっと止めたわけです。こちらとしては、あまりのナチュラルさに「え?なに?どした?」って感じ。でも、ベトナム語ができないから、どうしたのか分からない。聞けない。前に一度、別のバイタクの運ちゃんが後輪にレインコートを巻き込んじゃったときも、こんな感じで止まってたなーとフラッシュバックしたわけです。

事情を確かめられないため「次のおじさんの行動で何が起きたかを推察しよう」と考えた私は、じっとバイクの後ろでおじさんの動きを見守っていました。バイクから降りてどこかの部品をチェックするのか、それとも誰かに電話をして事態を説明するのか……。そうしたら、おじさん……、

 

そのままバイクを足で漕ぎ始めたんですよね!

 

ええ、もちろん椅子に座ったまま。その状態で、足だけでひょい、ひょいと。歩行者と並走する自転車のように。

 

いやいやいや!どゆこと!?結局何が起こってるの?

 

当然こちらはわけがわからずパニックです。え?え?あと10分でつかなければいけないのに!なにこれ?
その時点で目的地まであと2.7km。道半ば。ほんとうの意味で道半ば。

どうしよう。このおっさん、多分ガス欠だ。ということはもう自力走行はムリなわけで、他のバイタクに話をつけてくれたりするだろうか?いや、そんなことをしてくれるはずがない。ここはベトナムである。そんな気の利いたことをしてくれるはずがない。ということは、今から違うバイクを呼んで自力で乗り換える?え?そうしたらこのおっさんへの支払いはどうしたらいいの?半分の距離まで来たから半額???

私がぐるぐると考えているうちにおっさんが、おもむろに左に舵をきりはじめました。え?なんでそっち?目的地はこの道をまっすぐだけど……。と思っていたら、あることに気づいたのです。目の前にはちょっとした坂道。

 

……え?もしかして坂道を利用して加速しようとしてる……?

 

 

いや、坂道の推進力で2.7kmはムリ!
スキーのジャンプ台くらいの坂道じゃないと、ムリだから!

 

いやほんと、おっさん、マジで頼むよ!あと10分で約束の時間なんだって!この緩やかな坂道じゃ、雀の涙以下だよ!

さっきまで鼻歌まじりに余裕こいてた展開から、いきなり地獄のような状態に突き落とされた私。ちょっとこれ、どうなるの?え?なに?まさかのハノイで大名行列?? 

怒涛の展開は次回に続く!

後編はこちら

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です